みなさんこんにちは!
今回は、溶けてしまったバターをお菓子作りに使用できるかについての記事です。
※溶けてしまったバターを元に戻せる方法が書いてある記事ではありません。
オーブンに入れる前までにバターを溶かさないで作るお菓子はいくつかあると思います。
クッキーやタルト生地、パウンドケーキ(シュガーバッター法)など
よく聞く「バターをポマード状にして~」や「室温に戻した柔らかいバター~」と言うやつです。
本当は、溶け切っていない柔らかい状態(ポマード状)で加工しなければいけないのに、バターを溶かし切ってしまった。。。
なんて経験は誰にでもあると思います。
そんな時、溶けてしまったバターでもそのまま続行するか、溶けてしまったバターを別の用途に回して
新たなバターを使って(買って)やり直すか迷う人もいるかと思います。
こちらの記事は、まさに今👆のように迷ってしまっている人に向けて書いています。
結論
使わないことをおすすめします。
(大体はレシピの意図に反する・またはバターの特性を生かせないため失敗する)
ちゃんとしたものを作りたいのであれば、この記事を最後まで読み
しっかりとバターについて理解してから新しいバターを購入して再チャレンジしましょう!
※乳製品業界のまわし者ではありません。
溶けてしまったバターでもいけるでしょ!
と謎の自信から作り続けても、レシピ通りのお菓子をつくのは難しいと思います。
お菓子作りがうまくいかない大きな要因となります。
溶けたバターは元には戻らない
溶けてしまったバター、、、冷やしてもう一回固めれば、、
そんなふうに誰しも思ったことはあるかと思います。
いざ、再び冷蔵庫に入れて固めてみるも
あれ、なんか違うものができた。。。
誰しもが通る道ですね。
何が起こったのか
まずは元のバター(固形)の状態と溶けてしまったバター(液体)とで
どう違いがあるのかを理解するのが大切です。
絵を作ってみたので一緒に見ていきましょう!
※上記の絵では、極端な加熱によって状態が変わるかのように表していますが、
火にかけずとも電子レンジのかけすぎや、温かい場所に置いておくだけで同じ状態になります。
絵をパッと見ただけでも違いがわかるかと思いますが、詳しく書いていきます。
固形の時の構造:
固形のバターは元々、牛乳を生クリームと脱脂乳に分離させて、生クリームを加熱殺菌して
乳脂肪だけを凝縮して固めて作られています。
その乳脂肪(固形油脂)の中には重さの15%ほどのバターミルクを含んでいる状態になっています。
固形のバターの構造としては、乳脂肪(固形油脂)の中に小さな水滴状にバターミルクが分散している状態となっています。
液体の時の構造(混ぜずにそのまま置いておいたとき):
固形のバターが溶けてしまうと、固形の時は綺麗に乳脂肪の中を分散していたバターミルク
が沈殿してしまい油脂の部分とで綺麗な層が出来上がります。
層になる理屈としては、油脂(澄しバター)よりも比重が重い水分であるバターミルクの部分が下に沈殿して綺麗な層になるのです。
このようにバターの固体と液体はこんなにも構造が違うのです。
もはや別物と言ってもいいですね。
しかも、一度バターを完全に溶かしてしまうと残念ながら元に戻せないのです。
上記の絵のように液体となってしまったバターは層になってしまい、
その場で混ぜて冷やして固めても、どうしても冷やしている間に
分離してしまい、元の綺麗なひとまとまりな固体にはなりません。
溶けてしまったバターを使ったらなぜダメなのか
上記まででバターの固形と液体とで構造が違うのだと理解してもらえたと思います。
この章では、そんな溶けてしまったもう元には戻せないバターを
なぜそのままお菓子づくりに使っていけないかを解説したいと思います。
そもそもバターには大きく3つの特性というのがあります。
ここではあまり詳しく書きませんが、3つの特性があるのね くらいに思ってもらえればと思います。(知っているよって人は読み飛ばしちゃってください。)
ざっくりバター3つの特性について書きます。
- 可塑性(「かそせい」と読みます)
バター自体が13℃~18℃の時限定の特性です。
固形でもない液体でもない、ねっとりとしたクリーム状。
よくポマード状と表現されている状態で、上記の固形の時の構造を
保ちつつ、自由に形作ったり加工ができる状態のことを指します。
この特性を利用する代表にはパイ生地があります。
バターの温度なんて普段あまり気にしませんが、何回もやっていると感覚でわかってくるもんですね。
- ショートニング性
タルトやクッキーなどサクサクした食感を出せているのはこの特性のおかげ!
生地を作る時に、グルテンという小麦粉に含まれてるタンパク質の隙間に柔らかいバターが入りこみ、
焼いた時にバターが溶けるのでほろほろっとした食感を演出することが出来ます。
- クリーミング性
バターには卵と同じように柔らかい状態で混ぜていくと空気を抱き込む
性質があります。これ(空気を抱き込む)がクリーミング性です。
よくお菓子作りの中で言われている 「柔らかいバターを砂糖と一緒に白っぽくなるまで混ぜる」といううやつですね。
空気を含むとバターは白っぽくなってきます。
空気を含んだ状態のバターを利用することによって、ふっくらとした食感のケーキなどを作ることができます。
さて、バターの特性3つを見て何か気づくことはありませんか?
そうです、バター3つの特性はどれもバターが溶けてしまったら発揮できないのです!
よく見ると柔らかいバターとか、可塑性だの書いてあってどこにもバターを溶かすなんて書かれていません。
ということはお菓子作りにおいてバターを溶かさないで加工するレシピ(作り方)ではバターを溶かすなんてあってはならないことなのです。
今回の失敗を次回に活かすには
溶けてしまったバターはもう戻せません。
新しいバターを使って今度こそお菓子作りを成功させましょう!
ではどうやったら溶かさないようにできるか。
一般的にバターを柔らかくする方法は下記の2通りありますが、それぞれポイントをお伝えします。
- 使う分のバターを冷蔵庫から出して常温にしばらくおいておく(初心者向けの方法)
この方法はレシピとかにもよく書いてある方法だと思います。
ポイントは、「とにかくこまめに状態を手で触って確認すること」これだけです。
先ほど書きました、可塑性の温度帯は13℃~18℃でしたね。
ただ、そんなの見た目では絶対にわかりません!
冷蔵庫内の温度が大体2℃〜5℃となっていて、バターを冷蔵庫から出した瞬間から室温と同じくらいの温度になろうとしますよね?
室温と大体同じ温度になるまで大体30分〜1時間程度(季節によって室温が違うので変化する)とされています。
ただ、その間に何回か状態をゴムベラなどでつっついてみて確認してください。(置き過ぎると一部溶けてしまう可能性があります)
硬すぎてもダメですが、大体軽く押しただけで抵抗なく凹むくらいがちょうど良いとされています。
- 電子レンジで温める(上級者向けの方法)
この方法はなかなか上級者向けですね。
こちらは常温に置いておく方法と比べると、かかる時間が全然違います。
断然こちらの方法の方が早いので、プロのパティシエや熟練の主婦さんがやってたりしますね。
やり方は至って簡単で、使う分のバターをラップまたはレンジにかけて大丈夫な容器に入れて電子レンジにかけるだけ。
ただ、みんな電子レンジにかけすぎてしまう、、、
コツは「とにかくこまめに状態を確認すること」
常温に置いておく方法と変わらないですが、こっちの方が一時を争うイメージ。
ちょっとでもレンジにかけすぎただけで一部が溶けてしまうので、バターのサイズによりますが、数秒かけては状態を確認するの繰り返しです。
あとは、こまめに確認するのとついでに、バターの向きを変えてみたり、裏返してみたりしてください。
(容器に入れている方はちょこちょこ混ぜながら)
電子レンジ何かを温めるときって、大体ムラがあるものなので(レンジ自体のクセみたいなもの)
動かしたり、こまめに混ぜたりすることによって硬さを均一に近い状態にすることができます。
最後に
ここまで読んでくれた方であれば、次回はバターの状態を気にしながら柔らかくすることができると思います。
バターを柔らかくして使うことに大事な理由があります。
「なんでこのレシピは、バターを溶かして使わないのか」など気にできるようになれば
今までとは全く違った視点でお菓子作りに取り組めるようになると思います。
お菓子作りで一番大切なのは、やはり「計量」で次に来るのが「温度」だと思ってます。
それを意識するだけでも上達度合いはかなり変わってくるはずです。
なんとなく作るのはもうやめましょう。(←まぁこれはこれでぼーっと作るのも楽しいんですがね、、)
しっかりしてしたものを作りたいのであればそうした意識はとても大切なように思えますね。
おまけ
僕の師匠だったシェフは生地系を得意とする方でした。
ひとつのタルト生地やパイ生地、クッキー生地をとっても
種類ごとに複数の小麦粉やバターを使い分けて作るほどにこだわりが強い方でした。
バターなんて店舗に9種類常に置いてありましたね。(そんなにバターって種類あったんだ、、ってくらい)
そんな方が言っていたのは、「バターは硬い状態で加工すればするほど出来上がりの時の香りがよくなる」でした。
その言葉を数年自分の中で考えた結果、導き出した答えは、
言葉の通り、バターを溶かしてしまうと香りが飛んでしまう。
ただ、あまりにもバターが硬いと扱いにくかったりバターのダマができてしまう。
バターが柔らかい時、「作業がしやすい」「香りが飛ぶ」
バターが硬い時、「作業がしにくい」「香りが良い」
そう考えると、なるべく硬い状態(とはいえギリギリ加工できるほどの硬さ)と
作業のしやすさのバランスを自分の中で考えて作っていくことが大切なのだなと理解しました。
語彙力があまりなくて伝わりにくいかもしれませんが、そうやって
考えながらお菓子を作っていくことが大切であると教えてくれたなと
今では懐かしいです。
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